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変色系男子の日常。

casualties

ノルウェイの森Wikipedia を読んでいたら次の文章が気になった。村上春樹本人の物語ついての述懐だ。

この話は基本的にカジュアルティーズ(うまい訳語を持たない。戦闘員の減損とでも言うのか)についての話なのだ。それは僕のまわりで死んでいった、あるいは失われていったすくなからざるカジュアルティーズについての話であり、あるいは僕自身の中で死んで失われていったすくなからざるカジュアルティーズについての話である

この「カジュアルティーズ」が聞き慣れない単語で、歯にはさまったサラダチキンの断片のように気になってしまった。そこで簡単に調べてみた。

casualties の単数形である casualty を英和辞典で調べると

(事故・戦闘などの) 死傷者、被害者、人的損失
(戦争における) 損耗兵力
[-ties] 死傷者数、犠牲者数

とある。英英辞典で調べると

someone who is hurt or killed in an accident or war

とある。つまり「本人の意志とは関係なく事故や戦争の犠牲になった人々」というニュアンスが含まれるのだろうか。「犠牲者」と訳せる他の英単語に victim があるけど、こちらは犯罪や災害、病気の被害者というニュアンスがあるようだ。

たしかに小説には、読者としてあるいはもしかしたら作者としても、登場人物の望まぬ犠牲と向き合わなければならないときがある。しかし、その犠牲がなくては物語が核心に迫ることはどうしてもできないできない。そういう犠牲者に対して casualties という英単語は非常にしっくりくるように思える。

村上春樹が聞き慣れない英単語をさらっと使っていても、不思議と気取った感じがしない。むしろ適切な言葉を丁寧に選び出している感じがして好感が持てる。海外暮らしの長い作家特有の能力なのかもしれない。