「やがて君になる」6 巻 感想メモ
ついに始まる生徒会劇。間違いなく本作品のターニングポイントとなるのがこの巻だ。

- 作者: 仲谷鳰
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: コミック
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以下、ネタバレ注意。
後半の出来事を読んで、天地がひっくり返るような思いがした。読者は分かっていたはずだ。いつかこの瞬間が訪れることを。そして、作中の侑と橙子のふたりも。
「好き」が怖い
「こういうあなたが好き」って「こうじゃなくなったら好きじゃなくなる」ってことでしょ?
だから「好き」を持たない君が世界で一番優しく見えた
違う!侑は今だって優しい
誰のことも特別だと思わない侑だからこそ好きになった橙子。その理由がこのセリフに集約されている。しかし「好き」を持たない侑はもはやいなくなってしまった。劇を通じて姉の代わりだった橙子がそうでなくなったように、特別を持たなかった侑もそうでなくなってしまったのだ。ふたりの関係をそうたらしめるあらゆる前提条件は、ついに覆ってしまった。
しかも、この後半の場面は 2 巻の後半の場面と対比的になっている。同じ河川敷で 2 巻では、侑は「先輩のこと好きにならないよ」と橙子に宣言していた。同時に侑は変わりたいと思うが、その気持ちは内にとどめていた。
でも 6 巻でついに侑は変わってしまった。そして、その思いを橙子に打ち明けられずにはいられなくなった。
同じ場所での対比的なシチュエーション、ここまで計算しているのかとうならされた。
氷の彫像のように繊細なふたりの関係。それを見事に描き出すこの作品に改めて脱帽した。変わってしまったふたりの行末を見守りたい。次巻の発売が楽しみで待ちきれない。